イタリアの芸術家ブルーノ・ムナーリは,1977 年から 1998 年に没するまでワークショップによる子どものための造形
表現教育活動を継続的に展開した。現在イタリアでは,ムナーリの作品の一部をモンテッソーリ教育の教具として紹介する言説が
存在するが,本研究調査の結果,この言説はムナーリとモンテッソーリの没後に形成され,公に認められていないものであること
が確認された。本研究では,主にイタリアにおけるムナーリの造形表現教育とモンテッソーリ教育の関係と社会的認識を明らかに
することを目的として文献資料およびイタリアでムナーリの教育に関わる関係者への聞き取りを中心に調査を行なった結果,近年
イタリアではムナーリの教育活動についての評価が広がり,またモンテッソーリ教育関係者がムナーリの教育メソッドを学んで教
育実践に取り入れていることが確認された。