ラテンアメリカ諸国では、1930年代から輸入代替工業化政策が開始されるが、同政策では資本と労働力において農業部門が工業部門を支援すべきとされたため、コーヒー、バナナ、砂糖などの生産を中心とする外貨獲得のための輸出型農業が振興され、それに必要なインフラの建設や農業の機械化も各国政府が推進した。一方、この政策は農業部門における低賃金主義と大農場経営者による土地なし農民の搾取を助長するだけでなく、1940年代から1960年代には同地域の多くの国々でトウモロコシ、ジャガイモなどの主食用作物が不足する事態を引き起こした。その結果、1960年代には各国の農村部で土地の所有権を求めるデモが広がったため、各国政府は米国政府の支援を得つつ、農業の生産性向上と土地分配の不均衡是正を目的とした農地改革を行ったが、多くの国々において所期の目標を達成できなかった。
その最大の原因は、土地の登記制度及び土地の権利書発行の制度上の不備であった。この制度的欠陥により、農民が一区画の農地を分配されたとしても、土地を担保とした農業融資を得ることができず、また、農業普及員による技術的な支援もなかったことから、多くの小農が結果的に土地を手放すこととなった。 同地域の小規模産油国であるエクアドルも1960年代から農地改革に着手したが、国家開発政策における重点分野としての工業と農業の対立、農業政策における輸出志向型農業と伝統的農業の対立、農地改革政策における土地の再分配の促進と農業生産性の向上の対立などにより、農地改革について一貫性のある政策を維持できず、また、農地改革拓殖庁(IERAC)の行政能力の問題、土地所有権を保障する土地登記制度の不備などのために、初期の目標を達成できなかった。
今後エクアドル政府に求められる政策として、輸出志向型農業への補助金の廃止、不動産登記制度の近代化、正式な土地所有権取得制度の確立、土地税制の近代化と土地税の強化、抵当銀行及び土地銀行の設立を内容とする「土地市場活性化アプローチ」を提言した。