インドシナ半島に位置するラオスは、中国、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーに囲まれた内陸国である。1986年以降、社会主義を標榜しながら市場経済を推進してきた典型的な低所得国である。過去30年間、鉱物資源や電力の輸出によりGDPは年々増加しているが、全人口の65%が住む農村部の農業は不振で、都市部と農村部の経済格差も拡大している。
このような状況の中、同国農林省国家農林普及庁(NAFES) は、スイス開発協力機構(SDC)とパートナーシップを締結し、貧困削減のためのLao Extension for Agriculture Project(LEAP)を2001年11月に開始した。同農林省はLEAPの実施を通じて形成されたLao Extension Approach (LEA)を2005年9月に全国を対象とした農業普及制度として採用した。同制度は1980年代以降世界の90カ国以上の国々で 導入された農民の主体性と参加を重視するFarmer to Farmer (FTF) Extension及び同手法の一環として 1990年代から本格的に開始されたFarmer Field School (FFS)の普及手法を取り入れたものであった。ラオス農林省とSDCは2014年1月までLEAPを継続し、同国におけるLEA普及に努めたが、期待された成果を得ることはできなかった。
このような背景のもと、本研究では、ラオス農林省とSDCが12年間にわたり共同で取り組んできたにもかかわらず、なぜLEAが農業普及制度として根付かなかったのかを検証する。