Lao Extension Approach (LEA)及びKumbanとラオス政府の経済社会開発政策・戦略との関係、及びこれらの方策が同国の農業・農村開発事業に与えた影響―JICAのプロジェクトを事例とした考察
同国農林省国家農林普及庁(National Agriculture and Forestry Extension Service: NAFES)は、農村部の貧困対策と農業・農村開発の一環として地域のニーズに基づいた参加型の農業普及制度の構築を目的としてスイス開発協力機構(Swiss Agency for Development and Cooperation: SDC)からの支援を得てLao Extension for Agriculture Project (LEAP)を2001年に開始した。同農林省は同プロジェクトを通じて形成されたLao Extension Approach (LEA)を2005年9月に全国を対象とした農業普及制度として採用した。同制度は1980年代以降世界の90カ国以上の国々で導入された農民の主体性と参加を重視するFarmer to Farmer (FTF) Extension及び同手法の一環として1990年代から本格的に開始されたFarmer Field School (FFS)の普及手法を取り入れたものであった。LEAはNAFESから郡事務所までの研修・指導体制であるGovernment System (GES)及び農村コミュニティでの農村普及体制であるVillage Extension System (VES)により構成される。VESにおいては各農村コミュニティにて選出される農村普及員(Village Extension Worker)が郡事務所の普及員の指導のもとで地元の農業生産者グループに対する実践的な研修や技術指導をFTF及びFFSの手法により行うことが計画された。
LEAPにより形成されたLEAが2005年にラオス農林省に正式に採用されたことを踏まえ、LEAPはLEAの同国国内への普及・定着を目的として2014年1月まで合計約12年間に亘り継続されたが、NAFESの県・郡に対する行政権限の制約、党主導で実施された農村開発のための農村クラスター制度(Kumban)の導入、市場志向型農業の推進を目的としたNAFESの組織改編などにより、LEAPはLEAのモデル事業から普及活動を拡大させることができず、所期の目標を達成することができなかった。
以上の背景を踏まえ、本研究ではLEAとKumbanが5年ごとに策定されるNSEDP及び主要な開発戦略とどのような関係にあり、また、農業・農村開発分野のプロジェクトにどのような影響を与えたかについてJICAが実施したプロジェクトを事例研究の対象として考察することとする。